あまり話題になっていませんが、プロ野球パ・リーグの放送をめぐって戦争が始まっています。日本ハムを除くパ・リーグの5球団が、ソフトバンク子会社にCS放送の独占放映権を売却し、ソフトバンク子会社が放送会社に再販売することで合意しました。個々バラバラで交渉するよりも、まとまって交渉することで放送収入の増大を図るようです。この動きに対して、昨季はソフトバンク、西武、ロッテ、オリックスの4球団の試合中継をしてきたJスポーツが抵抗の構えを見せています。最悪の場合は今季のパ・リーグの試合の大半がテレビから姿を消す事態にもなりそうです。
パ・リーグの動きは、かねてから指摘されてきた球界の問題に正面から取り組むものといえそうです。これまでは球団別にテレビ局と個別に交渉していたテレビ放送の放映権について、リーグでまとまって交渉して、より有利な条件を獲得しようというものです。日本ハムは契約が残っているとして今回は不参加ですが、交渉がうまくいけば合流の流れになるのではないかと思います。
放映権の一括管理は、大リーグでも、海外の主要競技でも当たり前に行われているものです。今回は、地上波、BS放送を除く、CS放送限定のものですが、大リーグにならえば将来的には、地上波やBS放送にも波及してくるのは必至と思われます。巨額のテレビ放映権料は、その競技やリーグの繁栄に直結します。1990年代初めまで、斜陽リーグの象徴とまで言われたイングランドのサッカーが現在の隆盛を極めることとなったのは、衛星放送の巨額のテレビマネーの流入でした。ラグビーで言えば、スーパー14が可能になったのも衛星放送マネーの存在でした。それから派生してトライネーションズが毎年のイベントになりました。
日本のプロ野球の場合は、巨人=日本テレビはじめセ・リーグにテレビ局系列の球団が多く、球界全体として共同歩調が取れないという特殊事情があり、球界による放映権の一括管理は議論にすらなっていませんでした。テレビ放映権料がプロスポーツの繁栄と不可分になっている他のプロスポーツの現状を見るにつけて、放映権の一括管理ができない現状は、日本球界の根本的な問題といわれる「親会社の広告塔の存在」としての球団運営以上にある意味で重要な問題といえます。
人気の面で、不遇をかこってきたパ・リーグが、CS放送とはいえ、放送局主導で、買い手市場といわれる放映権交渉に、新たな手法で臨むことは、画期的なことといえます。将来的には、地上波やBS放送においても、プレーオフを目玉に他のレギューラーシーズンの試合の放映と組み合わせて、それ相応の契約を勝ち取ることも可能になると思われます。ソフトバンクがかかわっているところに釈然としない気持ちもありますが、今回の動きは現状に風穴を空けるものといえます。
果たして、Jスポーツ対パ・リーグのこの戦争の行方はどうなるか。近年のパ・リーグ球団の地域での盛り上がりを見ていると、「人気のセ、実力のパ」は死語になりつつと思いますが、巨人中心のテレビ放送の世界ではいまなお、厳然たる事実のようです。今回のJスポーツの姿勢には「しょせん、パ・リーグが生意気な」という業界の気分がにじみでているような気がします。
CS放送のスポーツ放送では、欧州サッカーなどの目玉にしてきた時期もありましたが、放送時間編成などを見ると、他のスポーツに比べてプロ野球の優位は明らかだと思います。Jスポーツがパ・リーグ放送を切り捨てることができるかは疑問です。スカパー!本体は、薄型テレビの需要が拡大する北京五輪に向けて、プロ野球を前面に売り込みを図る姿勢を見せているので、スカパー!にとってもパ・リーグ放送の切り捨ては簡単な問題ではないはずです。
Jスポーツは昨年、ラグビーの東日本トップクラブリーグ決勝を初めて中継するなど高く評価しています。個人的には、CS放送はラグビーのスーパー10の時代からの愛好者で、これからは南半球のラグビー放送が佳境を迎える時期ではあります。ただ、Jスポーツがパ・リーグ放送から撤退するのであれば、昔からのパ・リーグファンとしての立場を優先して解約もやむなしかな、とも考えています。(1カ月くらいかな?)
欲を言えば、このパ・リーグ放送撤退問題が大きな話題になって、世間の注目を集めてほしいと思います。日陰者だったパ・リーグがもはや無視できない存在であることを証明できるか。ある意味で、放送コンテンツとしてのパ・リーグの実力も問われていると思います。