くるみクラブ その2
蔵王クラブハウスの建設
1965年のくるみクラブの結成からエーコンクラブとの定期戦の実現の後、くるみクラブは大きく飛躍した。桑原先生の体育授業は法学部、商学部、経済学部、理工学部で行われ、学部ごとに5チームに編成されていたのが、69年になると学部の垣根を越えたチーム編成となり、8チームに拡大しました。クラブのエネルギーを生かそうと桑原先生が考えたのが、クラブの自前のグラウンドとクラブハウスを持つことだった。
そして1971年、日本のクラブで誰も出来なかった夢が実現した。宮城県蔵王町に、森林組合から土地を借りる。グラウンド3000坪、クラブハウス2000坪、駐車場500坪の合わせて5500坪。そして、クラブ員の手作りでクラブハウスを建てた。
5月から作業を始め、建築工事は土台のブロック積みから上物の組み立てまで学生達が自前でやりました。業者が施工すれば3500万円かかる見積もりだったが、学生がアルバイトをして、OBがボーナスを出して、資金850万円を集めた。1971年8月21日に蔵王クラブハウスが完成。グラウンド、宿泊棟3棟、炊事場、風呂場、洗面所、トイレ、中庭の食堂を兼ねたキャンプファイアー場を備えたものだった。
ほぼ時を同じくして、中央大学の男子に限られていたメンバーシップを他大学の学生や女子学生に開放するオープン化が実行された。クラブを支える心技体がそろい、クラブの魅力がさらに人の輪を広げることになってつながっていく。
ステータスとしてクラブハウスを持つということだけではなく、自前のグラウンドとクラブハウスを使った合宿は、共同生活を通じてチームワークや仲間意識を育てる教育の場となった。このことは桑原先生が強調してきた寮での共同生活の重要性とともに、くるみクラブの活力を生み出す車の両輪となりました。
くるみの合宿は、猛練習やしごきなどの体育会的体質とは無縁なものだそうです。そこには普通の体育指導者とは一線を画した、桑原先生ならでは人間観、ラグビー観、トレーニング観の実践があったのです。
「技術優先、必勝主義には目もくれず、クラブの中身の充実に重点を置き、そのための『環境』作りに力を注ぎました。誤解を恐れずに言えば、よい環境があれば人間のもっている良い資質が黙っていても大きく育つ、これが教育の基本原理の一つであると、私は信じています」
寮、合宿での共同生活
桑原先生は、体育授業でラグビー担当する前に、中央大学ハンドボール部の指導、社会人野球本田技研のトレーニングコーチを務め、実績を上げました。その中で強調しているのが、寮での共同生活の重要性です。1959年の中央大ハンドボール部監督就任で、何よりも先にアパートを借りて、炊事場、食堂を設けるだけの共同生活の場となる寮の整備を手がけたそうです。
著書「くるみ実る日」でこう書いています。「キャンプや寮での共同生活は、トレーニングとは無関係ではなく、わたくしのトレーニング理論でいう『応用トレーニング』の一つに当たります。一般的にトレーニングは、技術的、体力的なものをいいますが、応用トレーニングとは、例えばハンドボールの練習に他の球技や陸上競技を取り入れたりすることをいいます。そのほか、こうした共同生活によるチームワーク作りなども入るのです」
「寮生活」というのも、くるみクラブの大きな特徴です。わたくしの教育の中核にあるのが、寮生活を基本とする個人と個人の結びつきです」
「なぜ寮生活が大事なのでしょうか。自由と自治の訓練です」「共同生活にあたっては、『わが自由と同じように他人の自由も尊重すべきである』から他人を思いやる。これが大原則です」「他人が見ていようがいまいが、他社の立場への思いやりや配慮を行う、また、黙って自分のやるべき責任を果たす。それを自然なものとなるまでに身につけた人間。これがラガーマン的ジェントルマンです」「自分の義務を黙って淡々と果たす、他人への思いやりをさり気なく行う、これがスマートということです。このような自己自治が行われるところでは、自然と秩序も生まれてきます。それは、上からの押しつけではなく、そのような個人の集団の中から自然とわき上がってきたものなのです。明るい楽しさの中におのずからなる秩序、これがくるみクラブの寮やクラブハウスの目指す姿なのです」「そして、食事作りや掃除当番などの共同作業を通じて、自分の責任をきちんと果たすことや他人とのチームワークを学び、また、人と人とのつながりや友情が生まれるのです。…。くるみクラブの寮生活とは、このような自分で自分を教育してゆく実践の場なのです」
「蔵王クラブハウスを使った夏と春の合宿も、集団生活の自治の訓練の場です」「運動部の合宿のように『猛』練習はしません。普段から自主トレや節制を心がけていれば、合宿だからといって日常と変わったことをする必要はないからです。合宿とは、メンバー相互の友情を深めるためのものです。心を開いて友人とラグビーや人生や学生生活などを語り合う場であり、仲間との友情を培う場でなくてはならないのです」
先日見たラグビートップリーグのクボタ-ヤマハ戦で、クボタが共同生活の取り組みやチームワーク作りについて意識的に取り組んできたことが紹介されていましたが、半世紀も前のことでした。
初心者を大切にする心
それにもう一つ。くるみクラブが初心者を大切にしたことです。前回で書きましたが、エーコンクラブと対戦した第1期生は全員がラグビー初心者でした。2期生も、3期生も同じだったようです。その後もクラブが実力をつけた後も、クラブの姿勢は変わりませんでした。私が仲間に加わらせていただいた1990年代の前半の時でも「最近はラグビー経験者が増えてくるみらしさが消えてしまっている」という声がよく聞かれました。
最後に「くるみ実る日」からの引用です。
「初心者をたいせつにするというのも、くるみクラブの大きな特徴のひとつです。…ラグビーの特性は、体の大きな者も小さな者も、足の速い者遅い者、すばしっこい者、どんな人でも活躍できるところにあります。たとえ下手なチームメイトが居ても、そういうプレヤーがいることを前提にゲームを組み立ててゆかなくてはなりません」「体の小さい者や足の遅い者がいてもかまわないというのが、私のラグビー観なのです」
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コメント
いや~感激しました。
日比野監督の「荒ぶる魂」のタックルマン石塚を読んで涙した時と同じくらい感動しました。ボーミッツ(バーバーの前身)よりずっと前から、同じような気持ちでクラブを立ち上げた桑原イズムに感動しました。
有馬を見てると、そこに桑原イズムが感じられますね。
土曜の晩のアフターが楽しみですね。
これからも、両クラブ刺激しあっていきたいですね。
投稿: ボロ雑巾 | 2008年9月10日 (水曜日) 00:34
くるみはすごいです。人の厚みが違います
投稿: kaz | 2008年9月11日 (木曜日) 08:43